拘縮予防は早期発見から

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重い障害をもつお子さまは,年齢を重ねるとさまざまな二次障害が生じてきます。中でも,からだの変形・拘縮(こうしゅく)は最も生じやすく,ほかの多くの二次障害を呼びこんでしまうので要注意です。早期発見と予防が大切なのですが,どうしたらそれができるでしょうか。
 
重い障害をもつお子さまで変形・拘縮が進みやすい要因には,
 
  ・筋緊張亢進(こうしん):脳から異常な指令が出てしまうことによる筋肉のこわばり
  ・麻痺(まひ):脳から適切な指令が出せず筋肉を思うように動かせないこと
  ・医療的ケアなどさまざまな理由でとれる姿勢が限られ,長時間同じ姿勢でいること
 
などがあります。
 
膝が完全には伸ばせなくなる屈曲拘縮は,早い時期からよく見られる拘縮です。膝に拘縮のあるお子さまはあおむけになると,膝の裏と床の間に大きなすき間があいてしまいます。
 
床から浮いた膝は重力によって左右どちらかに倒れようとします。その力で骨盤がまわり,脊柱(背ぼね)がねじれてきます。
 
それを放置すると脊柱の側弯(左右へのカーブ)が進行してしまいます。そして脊柱側弯は,胃食道逆流や十二指腸通過障害といった消化管障害,呼吸が浅くなり痰が出しにくくなる呼吸障害など,命にもかかわるさまざまな二次障害につながってしまうのです。
 
だからこそ,お子さまがまだ拘縮のないうちからそのきざしを早めに発見し,進行させないことが重要なのです。
 
じつは,膝の拘縮が始まるずっと前から,ももの裏側の筋肉,ハムストリングス(大腿二頭筋・半腱様筋・半膜様筋の総称)の短縮が始まっています。ハムストリングスの短縮を見つけ,ストレッチなどで適切に対処すれば,膝の拘縮を止めたり進行を遅らせたりできるのです。

 

ハムストリングスの短縮を見つける方法は,図のようにお子さまをあおむけで寝かせ,片方のももを90°あげます。もう片方の足は伸ばしたままです。ももをあげた方の膝を曲げた状態から伸ばしていくと,どこかで膝の裏のすじがつっぱってそれ以上伸ばせなくなります。骨盤が動いたり,伸ばした方のももが床から浮いてしまったりしたらその時点で終了です。  
このとき,あげた方のもも(大腿骨)の延長線とすね(脛骨)が作る角度を膝窩角(しっかかく)と言います。膝窩というのは,膝の裏のくぼみのことです。
 
もし小学生か就学前のごきょうだいがいらっしゃったら,試しにやってみてください。足がまっすぐ上に伸びるはずです。つまり膝窩角はゼロ度です(1歳未満のあかちゃんは股関節に負担がかかるのでやらないでください)。大人は膝窩角が多少あるかもしれませんが,それでも90°よりはずっと小さいはずです。からだが硬い人ほど大きな値になります。


 

障害の重いお子さまで,膝の拘縮がまだ顕在化していなくても,膝窩角が90°近くあるお子さまは要注意です。手をこまねいていると,膝の拘縮が始まってしまうかもしれません。
 
ハムストリングスの短縮の進行を止め,膝の拘縮につなげないようにするためのストレッチをご紹介します。膝窩角を調べたときと同じようにももを90°にして,膝の裏がつっぱるポイントで,ちょっとだけ膝を伸ばす方向へ優しくストレッチしてあげてください。20〜30秒を3回。お風呂上がりが,筋肉が柔らかくなっていて痛みを感じにくいので,おすすめです。嫌がるなら無理せず,嫌がらない力加減で優しくやってあげてください。

やり方がよくわからない,あるいは不安だけど身近に相談できる専門家(小児整形外科医,理学療法士)がいないという方は,ご遠慮なくご相談くださいね。(理学療法士 佐野直樹)